第30回 長編 指示待ち族と占いブーム 最終編

こうして、彼等は彼等の受け入れやすい条件で、占いを受け入れたのです。

こうなると占いは、何ごとも自分の責任ではなく、「自分以外の何者か」のせいにできる…無意識のうちに自己の責任を回避し、『怒られる』危険性を回避しつつ、エクスキューズを利かせながら、かつ自分の好みの指令を選べる便利な世界へと変貌します。責任回避、精神的エスケープが可能な世界として彼等のまえに広がっていったのでしょう。占いに夢中になってその指令に従う彼等には、『だって○○ちゃんがああいってたから…』というようなパターンによく似た姿を見い出だします。 しかし、これは占いの誤った用法です。このままで放置するのは問題です。

占いを手段に使えば簡単に彼等にアプローチでき、彼等の心に入り込んで、彼等の行動を支配することさえ可能な現状は、非常に危険です。占いを悪用する輩が出現したからです。手品を魔法と偽るように、占いを超能力にみせかけて彼等の関心を引くことを画策するペテン師や、集団が出てきたのです。占いを扱う側にこそ、正しい姿勢が要求されます。 『占い』に携わる人間には厳しい倫理観が求められねばなりません。

しかし、若者の活字ばなれ…マンガ志向の現状の中で、情報を得る手段として活字はダメでもマンガならOKというような状況を逆手にとって、マンガを情報伝達の手段に活用したように、せっかく彼等が受け入れやすい『占い』というジャンルを無駄にすることはありません。教育の過程でインプットしはぐった自立するためのプログラムを上手に組み込んで提供すれば、彼等は抵抗無くこれを受入れるはずです。そこで徐々に訓練しながら指示待ち族を自立族に変身させることも不可能ではないでしょう。これは、『占い』のもつ可能性であり、占いの側に居る人間にあたえられた課題だとおもいます。
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